二胡の「千斤」について


二胡の音色については前回の「二胡の蛇皮の話あれこれ」の記事内でも触れましたが、二胡の蛇の皮が二胡のボディ(木材)と並んで二胡の音質を決定する上においてとても重要であるとお話させていただきました。
今回は二胡の音は音でも、「音質」ではなく「音階」に関連することを書きたいと思います。

と言っても、私は「音階」について専門的に話せる音楽的知識がありません。今回お話させていただくのは二胡の音階に非常に深く関わってくる「千斤」という箇所(パーツ)についてです。

千斤とは二胡の弦長(弦の長さ)をその演奏者に合った長さに調節するパーツです。これを動かすことによって、弦の長さを二胡奏者の腕の長さに合った最適な長さに調整します。

しかしこの千斤がとっても「悩ましい」のです。なぜなら、この千斤の調整(位置)には正解が無いからです。では正解が無いのに、みんなどうやって調整しているのでしょうか?

実は正解は「人それぞれ」なのです。

どんな千斤の位置でも、その奏者が素晴らしい音色でメロディを奏でていればそれはきっと「正解」なのです。まぁこんなことを言っては身もふたもないので、今回は少しでも「理想」に近づける千斤の調整について書いてみようと思います。

インターネットで千斤の位置について調べると、それぞれの講師や先生が様々な千斤の調整方法を紹介しています。ただ、腕や指の長さは個人差がありますので「弾きやすさ」という面で言うと、万人がその設定で良いかというと、きっと不都合な人も出てくるのではないでしょうか? 楽器を弾く際に「弾きやすさ」は非常に重要です。弾きやすくなければ、そもそも良い音など出せるわけがありません。

千斤の位置で運指は変わってきます。それを考えると厳密には運指の微妙なニュアンスを教える際には、二胡を先生と生徒の千斤の位置についても、少なからず考慮しなくてはいけないのかなと感じます。

千斤は音色や弾き方に非常に影響のあるパーツですが、多分、駒と違って気軽に位置を変えられないパーツです。あのぐるぐる巻の糸の位置を自分で変えてみようなんて最初はちょっと怖いですよね。

下の動画では千斤に関する内容を、二胡奏者「楊雪(ヤンユキ)」が丁寧に説明しています。ご自分の二胡の千斤の調整について悩んでいる方は一度ご覧になることをおすすめします。そして信頼できる先生に自分の理想の位置に千斤を設定して、今より更に良い音を出してくださいね!